連結管理会計の導入マニュアル

単体の月次決算や予算管理など、単体管理会計は実施しているものの,連結グループ全体の管理会計が進んでいないという声をよく聞きます。
本書は「連結管理会計をまずはできるところから始めてみよう」というコンセプトで、次のステップで連結管理会計を実施する流れを説明しています。

(ステップ1) 月次(実績)連結
各社の月次実績データを収集し,それを積み上げて月次(実績)連結を行います。各社からの報告フォーマットや項目などは、まずは子会社に負担のかからない程度にはじめ、子会社の実態把握や子会社の月次決算の精度を徐々にあげていくことを目的としています。

(ステップ2)予算連結
上記月次(実績)連結の結果と比較するために、各社の予算データを積み上げて予算連結を作成します。これにより、各社の予算実績比較を親会社側で実施することができるようになります。また、各社の実績データと予算データを利用して作成した連結結果を比較することで、連結の予実分析を実施することもできます。

連結決算は連結企業グループに属する各社の財務諸表を合算して作成します。
よって、各社が単体で実施している月次実績データや予算データを積み上げることで、連結ベースでの月次実績や予算を作成することができます。

しかしながら、このような手順は単体決算の延長線上にすぎず、真の連結管理会計とはいえないかもしれません。

連結管理会計の目的は連結企業グループ全体の業績アップ、業績改善にあります。連結企業グループ全体としての資源配分を最適化し、連結企業グループ全体としての業績アップ、業績改善をしなければ、真の連結管理会計とはいえません。

真の連結管理会計を目指すのであれば、連結企業グループ全体としての予算を定め。そこから構成単位である各セグメントおよび各社に予算配分をし、それと実績を比較していくというアプローチをとる必要があります。

しかしながら、連結企業グループに属する各セグメントおよび各社の現状を迅速に把握できていない段階で、最初から理想を高く掲げても、すぐに理想に近づけるのは無理があります。よって、本書のアプローチとしては、まずはできるところから始めてみようというスタンスで、比較的実施しやすい月次(実績)連結からスタートするという流れになっています。

本書が、これから連結管理会計をはじめようとしている皆様にとって、導入第一歩の一助となれば幸いです。

飯塚 幸子

第1章 「管理連結」の基本

1 「連結決算」とは

(1) 「単体決算」と「連結決算」
(2) 「連結決算」の目的
(3) 「連結決算」制度の変遷

2「管理連結」とは

(1) 「財務会計」と「管理会計」
(2)「制度連結」と「管理連結
(3)「管理連結」の目的
(4) 「管理連結」の手続

3 制管一致の考え方

(1)制管一致とは
(2)制管不一致型
(3)制管調整型
(4)制管組替型
(5)制管一致型(完全一致)

4 「管理連結」の進め方

(1)「管理連結」の種類
(2)「管理連結」の進め方

第2章「管理連結」を実施する際の検討事項

1 連結範囲の検討

(1)連結範囲とは
(2)「管理連結」における連結の範囲の検討

  • 「制度連結」と同様の範囲とする方法
  • 「制度連結」における連結子会社のみを含める方法
  • 非連結子会社も含めたすべての子会社を対象とする方法
  • 主要な子会社のみを対象とする方法

2 サブ連結の検討

(1)サブ連結とは
(2)「管理連結」におけるサブ連結の検討

3 連結財務諸表を作成する単位の検討

(1)データ収集単位,連結処理単位,報告単位
(2)データ収集単位,連結処理単位,報告単位の組み合わせパターン

  • パターン1:データ収集,連結処理ともに単月で実施するパターン
  • パターン2:データ収集は単月,連結処理は累計で実施するパターン
  • パターン3:データ収集,連結処理ともに累計で実施するパターン
  • パターン4:データ収集は累計,連結処理は単月で実施するパターン

(3)「管理連結」における組み合わせパターン検討

4 決算期が異なる子会社の取扱いの検討

(1)「制度連結」における決算期が異なる子会社の取扱い
(2)「管理連結」における決算期が異なる子会社の取扱いの検討

  • 決算期が異なる子会社の個別財務諸表をそのまま取り込む方法
  • 決算期が異なる子会社の個別財務諸表を親会社の決算月にあわせて取り込む方法

5 連結消去・修正仕訳の検討

(1)「管理連結」における連結処理の検討にあたって
(2)「管理連結」における連結消去・修正ごとの検討

  • 個別修正仕訳
  • 投資と資本の消去
  • 非支配株主持分への按分
  • のれんの償却仕訳
  • 政権債務の消去仕訳
  • 貸倒引当金の調整仕訳
  • 損益取引の消去仕訳
  • 未実現利益の消去仕訳
  • 連結手続上の税効果仕訳
  • 持分法適用仕訳
  • 開始仕訳

6 制管一致に対する方針

(1)連結管理会社における制管一致の必要性
(2)連結範囲の違いによる影響
(3)取り込む決算期の違いによる影響
(4)連結処理(連結消去・修正仕訳)の違いによる影響
(5)科目体系の違いによる影響

第3章 月次(実績)連結の進め方

1 「月次連結」を始めるにあたっての考え方

2 作成する財務諸表の種類の検討

3 子会社の月次決算の整備

4 科目体系・科目粒度の検討

5 連結消去・修正仕訳の検討

(1)投資と資本の消去
(2)当期純利益等の按分
(3)配当金の相殺
(4)のれんの償却
(5)債権債務の消去
(6)貸倒引当金の調整
(7)損益取引の消去
(8)未実現利益の消去
(9)連結手続上の税効果
(10)持分法適用仕訳
(11)個別修正仕訳
(12)開始仕訳

6 データ収集項目の検討

7 データ収集方法の検討

(1)簡易的なエクセル収集シートを利用する場合
(2)会計システムから出力したデータをそのまま収集する場合

  • (ステップ1)各会社の会計システムを調査する
  • (ステップ2)内部取引データの利用可否を検討する
  • (ステップ3)科目コード対比表,会社コード対比表を作成する
  • (ステップ4)データ取り込み確認

8 月次連結財務諸表の作成

(1)連結会計システムを利用するケース

  • (ステップ1)マスタの整備
  • (ステップ2) 自動仕訳機能の利用設定
  • (ステップ3) 各社データの登録
  • (ステップ4) 連結消去・修正仕訳の登録
  • (ステップ5) 月次連結財務諸表の確認

(2) エクセルを利用するケース

  • (ステップ1) 連結精算表エクセルの準備
  • (ステップ2) 各社個別財務諸表(試算表)から単純合算表への反映
  • (ステップ3) 連結消去・修正仕訳の反映
  • (ステップ4) 月次連結損益計算書の確認

9 月次連結損益計算書の作成手順例

(1) 「月次連結」の実施方針(例)

  • 作成する財務諸表の範囲
  • 単体月次決算で取り込む内容
  • 科目粒度
  • 連結消去・修正仕訳
  • データ収集項目
  • データ収集方法

(2) 簡単な数値例での確認

  • 事前準備
  • 月次連結損益計算書の作成

第4章 予算連結の進め方

1 予算連結の進め方

2 各社予算の連結

(1)内部取引計画
(2)在庫計画

3 科目体系の検討

4 連結消去・修正仕訳の検討

5 連結消去・修正仕訳の作成方法

(1)投資と資本の消去
(2)のれんの償却
(3)期純利益等の非支配株主への按分
(4)配当金の相殺
(5)債権債務の消去

  • 各社から内部取引消去データを収集する方法
  • 各社から債権(または債務)の内部取引消去データを収集する方法
  • 親会社側で内部取引消去データを作成する方法

(6)貸倒引当金の調整

  • 各社から貸倒引当金調整額を収集する方法

(7)損益取引の消去

  • 各社から内部取引消去データを収集する方法
  • 各社から収益のみ内部取引消去データを収集する方法
  • 親会社側で内部取引消去データを作成する方法

(8)未実現利益の消去

  • 棚卸資産に含まれる未実現利益の消去
  • 固定資産に含まれる未実現利益の消去

(9)税効果の調整

6 データ収集項目の検討

(1)単体予算データの収集
(2)連結消去・修正仕訳に関する予算データの収集

7 データ収集フォートマットの検討

第5章 見込連結の進め方

1 見込連結とは

2 見込連結の作成方法

(1)各社から見込データを収集し,それらを換算・合算・消去して「見込連結」を作成する方法
(2)各社からすでに収集している予算データ,月次実績データを組み合わせて各社の見込データを作成し,それらを換算・合算・消去して「見込連結」を作成する方法

  • A社見データの作成
  • 連結精算表(上期見込連結)の作成

(3)すでに作成済みの「予算連結」「月次連結」を組み合わせて「見込連結」を作成する方法

  • 「予算連結」(9月単月)の作成
  • 「月次連結」(8月累計)の作成
  • 上期見込連結の作成

第6章 その他の論点

1 存外子会社がある場合の「管理連結」

(1)財務諸表の換算に用いる換算レート
(2)決算期が異なる子会社がある場合の検討
(3)会計処理の統一

2 連結セグメント情報作成の進め方

(1)セグメントの考え方
(2)セグメント区分の検討
(3)セグメント情報作成用データの収集
(4)セグメント内取引,セグメント間取引の反映
(5)共通費の配賦

3 連結キャッシュ・フロー計算書の作成の進め方

(1)キャッシュ・フロー計算書とは
(2)直接法と間接法によるキャッシュ・フロー計算書のしくみ
(3)連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法
(4)「管理連結」における連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法

  • 原則法か簡便法か
  • どこまでの情報を必要とするか

(5)キャッシュ・フロー作成用データの収集

第7章 連結財務諸表作成の基本

1 連結財務諸表作成に関する基本的ルール

(1)連結管理会社と連結財務諸表制度
(2)連結財務諸表とは

2 連結財務諸表作成の流れ

(1)個別財務諸表の合算
(2)連結消去・修正仕訳

3 連結精算表

4 連結消去・修正仕訳

(1)投資と資本の消去

  • 投資と資本の消去とは
  • 出資設立(100%子会社)の場合
  • 出資設立はない場合
  • 100%子会社ではない場合

(2)のれん償却
(3)当期純利益およびその他の包括利益の非支配株主持分変お按分
(4)配当金の消去,配当金の振替
(5)債権債務の消去
(6)貸倒引当金の調整
(7)損益取引の消去
(8)未実現利益の消去
(9)連結手続上の税効果
(10)持分法適用仕訳

5 開始仕訳

6 存外子会社の連結

(1)財務諸表の換算
(2)投資と資本の消去
(3)非支配株主持分への按分
(4)のれんの償却・換算