連結決算の業務マニュアル

「連結決算を行うことになったが、何から始めればよいのかわからない」
「連結決算作業を誰でもできるように備したい」
「在外子会社を連結する場合の留意点を教えてほしい」

上場後まもない会社で新たに連結財務諸表を作成することになった、連結決算の属人化を排除したい。新規に在外子会社を設立したため従来の手順では済まなくなった、他社での効率的な手順を教えてほしい。といったさまざまな連結決算に関する悩み事を相談されることが増えてきています。

いままでは、その都度個別に対応してきましたが、これだけ多くのお客様が同じような内容で悩まれているのであれば、それを解決できるような本が書けないかと思い、本書を執筆するに至りました。

連結会計に関するアカデミックな内容は、「図解&設例 連結会計の基本と実務がわかる本』(中央経済社)で解説したので、本書ではできるだけアカデミックな内容は避け。連結決算業務で必要な手続に特化しています。

本書は、連結決算担当の方が、必ずといってよいほど悩むであろう、実務上の課題に関する対処方法をまとめています。

具体的には、「連結パッケージの整備」があります。会社数が少ないうちは連結パッケージというものは作成せず、その都度子会社からデータを入手して親会社側で組み替えて作業していることが多いようですが、子会社数が多くなるにつれ、連結パッケージと呼ばれるデータ収集の雛形が必要になってきます。

「第1章 連結パッケージの整備」にて、どのような内容でどのような形式で、何に注意して作成すればよいかのポイントをまとめています。

「第2章連結精算表作成手続の整備」「第3章連結キャッシュ・フロー計算害作成手続の整備」「第4章セグメント情報等の作成手続の塾備」では、事前の準備として必要になる情報にどのようなものがあるか、また。作成した結果をチェックする方法として、どのような方法があるかなど、実際の現場でよくある質問に対して回答した内容となっています。

「第5章新規連結子会社に関する検討事項」では、新たに連結子会社が増えた場合に、事前に準備しておかなければならないことや検討が必要な事項を整理しています。
また、キャッシュ・フロー計算書作成上の留意点についても解説しています。

在外子会社を連結する際の手順は、「第6章在外子会社を連結する場合の検討事項」にまとめています。

国内子会社のみだったところに、在外子会社が新たに加わると、とたんに連結決算作業が複雑になります。従来の連結精算表はそのままでは利用できず、在外子会社に対応できるように修正する必要があります。

キャッシュ・フロー計算書についても、国内子会社だけでは生じなかった論点が発生します。第6章を見ていただければ、在外子会社を連結することになった場合でも、スムーズに決算を進められると思います。

長年連結に携わってきた経験に基づいて、私自身が効率的で導入しやすいと思う方法を具体的に記載しています。本書が、連結担者の悩み事を解決するヒントになれば、これ以上の喜びはありません。

飯塚幸子

第1章 連結パッケージの整備

1 連結決算の全体像の把握

(1)連結財務諸表とは
(2)連結財務諸表作成の流れ
(3)連結財務諸表を効率的に作成するうえでの留意点

①会計処理・会計基準の変更点等の確認と調整
②連結範囲の検討
③資本取引等の確認と調整
④子会社データ収集準備
⑤決算スケジュールの作成
⑥マスタ整備(連結会計システムを利用している場合)
⑧開始仕訳の作成と確認

(4)各社からのデータ収集方法

①その都度対応,個別対応
②連結パッケージの利用
③連結会計システムの利用
★コラム 連結会計システム

2 連結パッケージの構築

(1)連結パッケージとは何か
(2)連結パッケージの項目の洗い出し
(3)連結パッケージのひな型の検討

① 個別財務諸表
②関係会社間債権債務,関係会社間取引高
③たな卸資産内部取引明細
④ 勘定科目増減明細
⑤ セグメント明細

(4)連結パッケージのチェック

3 子会社への展開

(1)子会社の勘定科目体系の確認
(2)科目対比表の作成
(3)子会社の会計処理の確認
(4)個別修正の要否の検討
(5)個別修正方法の検討
(6)子会社用マニュアルの整備、子会社説明会の実施

第2章 連結精算表作成手続きの整備

1 資本連結

(1)資本連結とは

①投資と資本の相殺消去
②支配獲得後剰余金等の非支配株主持分への按分(100%子会社ではない場合)
③のれんの償却
④子会社株式の減損の戻し

(2)事前確認事項
(3)持分推移表の作成
(4)のれん償却スケジュール表の作成
(5)理論値チェック

①100%子会社のケース
●設例2-1-1 ●100%子会社の場合の理論値
②100%子会社ではないケース
●設例2-1-2 ●100%子会社ではない場合(持分比率の変動がない場合)の理論値
●設例2-1-3 ●100%子会社ではない場合(持分比率の変動がある場合)の理論値
③ 持分法適用会社のケース
●設例2-1-4 ●持分法適用会社の場合の理論値

 
(6)理論値チェック表の作成

★コラム 非支配株主持分とは
★コラム 追加取得、一部売却(支配継続)の処理
★コラム 接所有がある場合の処理

2 債権債務の消去,取引高の消去

(1)債権債務の消去、取引高の消去とは
(2)会社間取引状況の整理

①営業取引
②財務取引
③経費の付替え
●設例2-2-1 ●地代家賃の立替
●設例 2-2‐2 ●地代家賃の立替(未達があり、連結消去・修正仕訳で処理する場合)
④配当金の支払
⑤固定資産の売買取引等

(3)内部取引消去手続の改善

①子会社側で消去対象ではない科目の金額まで報告しているケース
②どちらかの会社で未計上の取引が存在するケース
③内部取引高として報告した金額が誤っているケース

(4)内部取引消去ルールの作成

①内部取引消去ルールの必要性
②内部取引消去ルールの作成
③内部取引消去ルールの例
●設例2-2-3 ●債権優先、収益優先の内部取引消去

(5)内部取引突合表の作成

3 貸倒引当金の調整

(1)貸倒引当金の調整とは
(2)貸倒引当金の設定状況の確認
(3)貸倒引当金の調整額

①債権残高に実績率等を乗じているケース
②個別引当を行っているケース
③貸倒引当金を設定していないケース

(4)貸倒引当金の調整目の確認
(5)貸倒引当金調整表の作成

4 未実現損益の消去(たな卸資産)

(1)未実現損益の消去とは
(2)商流の整理

●設例2-4-1 ●たな卸資産に含まれる未実現損益の所在

(3)商流ごとの未実現損益消去の基準の検討

●設例2-4-2 ●たな卸資産に含まれる未実現損益の消去仕訳

(4)未実現損益消去額の計算方法の検討
(5)たな卸未実現損益計算表の作成

★コラム 評価損と未実現利益

5 未実現損益の消去(固定資産)

(1)固定資産に含まれる未実現損益の把握

①売却側が売上高として計上したケース
②売却側が固定資産売却損益を計上したケース

(2)未実現損益を含む固定資産情報の確認

① 減価償却方法の確認
●設例2-5-1 ●固定資産に含まれる未実現損益の消去仕訳
② 期末残高の確認
●設例2-5-2 ●固定資産に含まれる未実現損益の消去仕訳(減損)

(3)固定資産未実現損益管理表、固定資産未実現損益償却管理表の作成

6 連結精算表の作成

(1)連結精算表のサンプル

①列項目
②行項目

(2)連結精算表の記入方法

①借方、貸方の記入方法
②連結精算表内の整合性の確認
③ 連結精算表の記入例
●設例2-6-1 ●連結精算表の作成

(3)連結精算表数値の確認

①連結財務諸表間の整合性の確認
②各金額の妥当性の確認
③各金額の理論値との確認
④ 単体金額と連結金額との確認

(4)連結精算表比較分析資料の作成

第3章 連結キャッシュ・フロー計算書作成手続きの整備

1 連結キャッシュ・フロー計算書作成の流れ

(1)原則法
(2)簡便法

2 連結キャッシュ・フロー計算書を作成するうえで必要となる情報

(1)総額表示が必要な勘定科目の増減内容別の金額
(2)キャッシュ・フロー上の取扱いが異なるものの内訳
(3)現金及び現金同等物に含まれる科目の分解

3 勘定科目とキャッシュ・フロー項目の関連づけ

(1)貸借対照表の勘定科目ごとのキャッシュ・フロー区分の検討
(2)投資活動,財務活動に関する勘定科目の増減内容の検討

①投資活動に関する勘定科目の増減内容の検討
②財務活動に関する勘定科目の増減内容の検討

4 キャッシュ・フロー項目の洗い出し

5 連結キャッシュ・フロー精算表の作成

(1)連結キャッシュ・フロー精算表の作成手順
(2)連結キャッシュ・フロー精算表数値の確認

①連結キャッシュ・フロー精算表数値の確認ポイント
②連結損益計算書との整合性の確認
③連結貸借対照表の前期と当期の差額との整合性の確認
④連結損益計算書および連結貸借対照表の前期と当期の差額を調整した金額との整合性の  確認
⑤ 確認シートでの確認

第4章 セグメント情報等の作成手続の整備

1 セグメント情報作成の流れ

(1)セグメント情報とは
(2)セグメント情報作成の流れ

①連結財務諸表と同様に、仕訳を積み上げて作成する方法
②連結財務諸表とセグメントに分解する方法

2 セグメント情報を作成するうえで必要となる情報

(1)個別財務諸表の報告セグメント別の分解
(2)連結消去・修正仕訳の報告セグメント別の分解

①個別修正仕訳の報告セグメント別金額
②内部取引消去仕訳、未実現損益消去仕訳、貸倒引当金調整仕訳の報告セグメント別金額

3 セグメント情報の作成

●設例4ー3ー1 ●セグメント情報の作成

第5章 新規連結子会社に関する検討事項

1 事前確認事項

(1)支配獲得日の確認

① 子会社を設立したケース
② 株式取得等により支配を獲得したケース
③ 非連結子会社の重要性が増して当期から連結子会社としたケース

(2)子会社の資産および負債の時価評価の検討

①時価評価すべき資産および負債は何か
②時価評価額はいくらか
③税効果は考慮する必要があるか
④時価評価資産負債管理表の作成

(3)投資金額の修正および評価の検討
(4)投資と資本の相殺消去仕訳の検討
(5)新規子会社の会計方針の確認
(6)新規子会社の科目体系の確認
(7)新規子会社との取引内容の整理

①内部取引内容の確認
②未実現損益の確認

(8) 新規子会社への連結パッケージの説明

2 連結精算表作成時の留意点

(1)株式取得等により新規連結子会社としたケース

●設例5-2-1 ●株式取得により新規連結子会社としたケース

(2)非連結子会社の重要性が増して当期から連結子会社としたケース

●設例5-2-2 ●非連結子会社を当期から連結子会社としたケース

3 連結キャッシュ・フロー計算書作成時の留意点

(1)収集すべき情報
(2)新規連結子会社取得による収入(または支出)

① 子会社を設立したケース
●設例5-3-1 ●子会社を設立した場合の連結キャッシュ・フロー精算表
② 株式取得等により支配を獲得したケース
●設例5-3-2 ●株式取得等により支配を獲得した場合の連結キャッシュ・フロー精算表
③ 非連結子会社の重要性が増して当期から連結子会社とした場合
●設例5-3-3 ●非連結子会社の重要性が増して当期から連結子会社とした場合の連結キャッシュ・フロー精算表

(3)キャッシュ・フロー内部取引の消去

●設例5-3-4 ●連結キャッシュ・フロー計算書の作成

(4)連結キャッシュ・フロー精算表の作成

●設例5-3-5 ●連結キャッシュ・フロー精算表の作成

第6章 存外子会社を連結する場合の検討事項

1 存外子会社を連結する際の留意点

(1)決算期の論点
(2)外貨換算の論点
(3)資本連結の論点
(4)内部取引の論点
(5)連結キャッシュ・フロー計算書作成時の論点

2 親会社の決算日と異なる場合の調整方法の検討

●設例6ー2ー1 ●決算日が異なり、重要な不一致が生じているケース

3 存外子会社の財務諸表の換算方法の検討

4 資本連結の留意点

(1)新規連結時における留意点

①存外子会社を設立したケース
●設例6ー4ー1 ●存外子会社を設立したケース
②株式取得により支配を獲得したケース
●設例6ー4ー2 ●株式の取得等により支配を獲得したケース
③非連結子会社の重要性が増して当期から連結会社のしたケース
●設例6ー4ー3 ●非連結子会社の重要性が増して当期から連結会社としたケース

(2)為替換算調整勘定の按分

●設例6ー4-4 ●存外子会社を設立したケース(100%子会社でない場合)

(3)外貨建のれんの処理
(4)支配獲得後の持分変動の処理

①持分が増加したケース
②持分が減少したケース

5 内部取引消去の調整方法の検討

(1)損益取引の消去

●設例6ー5ー1 ●子会社の損益計算書の換算

(2)債権債務の消去

●設例6ー5ー2 ●子会社の賃借対照表の換算
●設例6ー5ー3 ●存外子会社の親会社向け買掛金残高
①国内子会社と同様のルールで差額調整を行うケース
②為替換算調整勘定で調整するケース
③為替差損益で調整するケース

6 連結キャッシュ・フロー計算書作成時の留意点

(1)存外子会社のキャッシュ・フロー項目の換算
(2)連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法

①原則法
②簡便法

(3)簡便法による連結キャッシュ・フロー清算表の作成手順

①前期と当期の連結賃借対照表の差額の計算
②為替影響計算表の作成
③為替の影響額の調整
④勘定科目増減明細の換算

(4)数値例での確認

●設例6ー6ー1 ●連結キャッシュ・フロー精算表の作成

(5)内部取引消去の対象となった債権債務から生じた為替換算差額の処理